雨の日の出来事。

何だか心がザラついて、嫌な気分が続くときもある。
キリキリと頭の奥が鳴っているような感じで、すっかり心の中が錆び付いているような。
しかも、今夜は冷たい雨が降っている。
こんな気持ちを引きずったまま部屋へ帰るのが嫌で、コンビニでズルズルと長居してしまった。
いい加減にそれにも飽きて、申し訳程度の買い物を済ませて外へ出ようとした。
そこへ、入れ違いで複数の人が店内に入ってきた。
そこのコンビニは自動ドアではないので、無意識にドアを空けて彼等が通り過ぎるまで空けたままにしていた。
すると「ありがとうございます。」と声が返ってきた。
良くみると彼らは若い夫婦で、父親は幼い子を抱え、母親は両手に荷物を持っていた。
それに気付いた途端、心の錆が一気に溶け落ちて、ゆっくりと柔らかい暖かさが広がったような気がした。
「ありがとう」とコンビニを背にしながら、心の中で呟いた。